漆器問屋が提案する、新しい暮らしの器〜曽明漆器店 x KAIRI EGUCHI STUDIO江口海里さん〜
福井県外を拠点とするデザイナーがチームを組み、
現代の生活に合わせてアップデートさせた伝統工芸の商品を
約8カ月かけて開発しました。
「開発ストーリー」では、商品を手掛けた職人とデザイナーに
プロジェクトを振り返っていただき、
開発の裏側やこだわり、ものづくりに対する考えなどを語っていただきます。
さて、両者からどんな話が飛び出すでしょうか。
お話を伺ったのは…
CRAFTSMAN
WEB
DESIGNER
理想の形を求め、産地を横断
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F-TRADに参加したきっかけを教えてください。
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曽明(晴)
以前から商品開発をしたいと思っていたのですが、
デザイナーさんをどう探せばいいのかわからず困っていました。
そんなタイミングでF-TRADのお話をいただき、ぜひやってみたいなと。
曽明漆器店に合うデザイナーさんを組み合わせてくださったおかげで、安心して商品開発ができました。 -
江口
僕はF-TRADに関わるのが今年で3年目です。
3年連続は僕だけかな(笑)。
ふだん大阪では工業製品のデザインを手がけることが多いので、
伝統工芸やものづくりに携わる機会をいただけてうれしく思います。 -
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今回開発した商品について教えてください。
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江口
漆器のお食い初め膳と酒器です。
晴奈さんからはお食い初め膳、富代さんからは酒器というように、
お二人からいただいたアイデアをもとに進めていきました。
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お食い初め膳と酒器を選んだのには理由があったんですか?
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曽明(晴)
お食い初め膳は前々からいろいろ考えていました。
儀式で一度使ったきりで押入れにしまいっぱなしというのは、
現代の感覚に合っていないしもったいないなって。
お食い初めが終わった後も日常使いできる商品を作りたいと思っていましたが、デザインがなかなか浮かばなかったんです。 -
曽明(富)
酒器はもともとお客さんから作ってほしいという要望がありました。
でも自分だけでは形にするのが難しくて。
今回、江口さんからとても素敵なデザインを
提案いただいたので商品化してどんな反応があるのか楽しみです。 -
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商品開発で苦労したことはありましたか?
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曽明(富)
江口さんから最初にいただいた酒器のデザインが気に入ったのですが、その形状を作れる木地屋さんがなかなか見つからなくて。
酒器、お食い初め膳ともに、木地屋さん探しには難航しました。 -
江口
これまで挽き物をデザインする経験がなかったので、
木地屋さんに提案した形状が技術的に難しいと
言われることが多かったんです。
職人さんとやりとりしながら「こういう形はできる・できない」と
改めて学ぶ機会にもなりました。 -
曽明(晴)
職人さんの技術的な部分に加え、
私たちも「自分たちが売るなら、こういう形や色がいい」という思いがありました。
江口さんとは何度もやりとりを重ねながら、
デザインを丁寧に調整していただきました。
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曽明(富)
木地の技術については、言葉で伝える難しさを感じていましたが、
実際に現地で実物を見ながら話し合うことで、
デザインが驚くほどスムーズに決まったんです。
もっと早い段階で木地を見てもらえばよかったなというのが、
今回の反省点ですね。
木地探しの過程では、
石川県の山中漆器の木地屋さんに巡り合えたのも大きな収穫でした。
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江口
曽明さんには木地屋さん探しで駆け回っていただきました。
最終的に、お食い初めの膳は河和田の井上徳木工さんで作っていただき、
それ以外の挽き物は
山中漆器の木地師 水井 愛裕(みずい・あゆ)さんにお願いできることになりました。 -
ー
木地屋さんを探すのに苦労されたんですね。
商品開発を通してどんな気づきがありましたか? -
江口
商品開発は職人とデザイナーが組むことが多いけど、
曽明漆器店は“問屋さん”という立場です。
職人との間にワンクッションあることで
やりとりが難しい部分もありましたが、
とても勉強になりました。 -
曽明(晴)
私たちは職人ではないので、「できる/できない」の判断ができません。
そのため、江口さんのアイデアを私たちの言葉を介して
職人さんに伝えるシーンが多くありました。
ちゃんと意図が伝わっているか不安なこともありましたが、
だからこそ丁寧に意思疎通をすることの大切さを実感しました。
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江口
振り返ってみると、
僕たちのチームは文章でのやりとりがスムーズだったなと思います。
もちろん、木地を決めていく時のように直接会って話す機会も大事。
でも、お互い咀嚼に時間がかかるタイプなので、
思っていることを書き綴って
Slackで送り合うやり方がけっこうフィットしていたのかなと思います。
尊重し合える関係性
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商品開発を振り返って、お互いをすごいなと思った点を教えてください。
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江口
デザイナーや職人は作る人なので、
売ることまで意識するのが難しいですが、
曽明さんは作り手と売り手をつなげる販売のプロ。
プロジェクトのなかで、
マーケティング的な視点でご意見をいただくことも多かったですね。好きなものをつくるというよりは、販路、価格帯を意識してちゃんと売る。
それに、職人さんとのつながりがたくさんあるのもすごいです。 -
曽明(晴)
江口さんはこちらが要望を言っても否定されることがなくて、
とにかく勉強量がすごいんです。
言ったことに対してすごく丁寧に調べてくださる方です。 -
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デザイナーに対するイメージが変わりましたか?
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曽明(晴)
そうですね。
実は以前もデザイナーさんと商品を作る機会があったのですが、
うまく意思疎通ができなかった苦い経験があり、
デザイナーに対して少し恐怖感を持っていたんです。でも、今回は江口さんの人柄のおかげで自分の意見を伝えられる土壌ができたので、安心してものづくりができて、
楽しいと思えるようになりました。
自分のやるべきことがはっきりしたことで、
デザイナーへの恐怖感がなくなったと思います。 -
江口
昨日その話をセイコガニをいただきながらしました(笑)。
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いいですね。江口さんと曽明さんはどんな関係性ですか?
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江口
尊重し合える関係ですね。
こうしていきたいという意見があればその方向にしたがって、
お互いの意見を聞き合いながら進めています。 -
曽明(晴)
尊重し合っている分、
どこまで我を通していいのかをお互いに遠慮しながら進めることも。 -
曽明(富)
コミュニケーションを丁寧に重ねていくなかで、
江口さんには100%思いを伝えられたと思います。 -
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今後の展開についてはどうお考えですか?
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曽明(晴)
曽明漆器には「KyutarouBLUE」という既存のブランドがあり、
若い世代を呼び込む入口の商品として販売しています。
今回の商品は「KyutarouBLUE」とは位置付けを変え、
価格帯も高めに設定するなど、高級ラインを考えています。 -
江口
販売方法はまだまだ検討中ですが、
酒器は木地にウレタン塗装したものと
4色の本漆を塗ったものを展開していきます。漆は今回のF-TRADに参加している
辻田漆店チームが開発した「NIVI」を使いました。
お食い初め膳にも「NIVI」を塗り、シックなトーンにしています。
まずは小ロットから広げていきたいですね。 -
曽明(富)
高級ラインということで、
沈金の伝統工芸士である山本勝さんの加飾を入れた商品も
作りたいと思っています。
今後も本漆や沈金などを使った商品を作り続けることで、
産地や職人さんを応援していきたいですね。
今回開発した商品はこちら
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喰初膳 鈍彩(にびさい)

