「これも和紙?」驚きから越前和紙の魅力を伝える

「これも和紙?」驚きから越前和紙の魅力を伝える〜山岸和紙店 × 佐々木拓さん〜

PAPER OR F-TRAD MADE 2026 越前和紙
「F-TRAD」では、福井県内の伝統工芸の職人と
福井県外を拠点とするデザイナーがチームを組み、
現代の生活に合わせてアップデートさせた伝統工芸の商品を
約8カ月かけて開発しました。

「開発ストーリー」では、商品を手掛けた職人とデザイナーに
プロジェクトを振り返っていただき、
開発の裏側やこだわり、ものづくりに対する考えなどを語っていただきます。
さて、両者からどんな話が飛び出すでしょうか。

お話を伺ったのは…

CRAFTSMAN

山岸保喜
山岸和紙店
山岸保喜さん
1979年福井生まれ。越前市今立地区に拠点を構える産地問屋〈山岸和紙店〉の専務取締役。大学卒業後、眼鏡デザインの会社にて眼鏡・販促物の制作に従事し、2014年に山岸和紙店に入社。2017年、創業者名を冠したブランド〈sogoro〉を立ち上げ、懐紙・カミノカケラなど“普段使い”路線を開拓。東京のクリエイターチームと開発した掛け軸シリーズ〈JIQUU〉など、伝統技術にデザインの息吹を注ぎ“温故創新”を体現している。
WEB

DESIGNER

佐々木拓
佐々木拓さん
アートディレクター/グラフィックデザイナー/プロダクトデザイナー。現在、コクヨYOHAK DESIGN STUDIOに所属しながら、KANAISASAKIとしても様々なデザインに取り組む。コクヨでの実績に「コクヨCI」「THINK OF THINGS」「COPY CORNER」、社外の実績に21_21DEIGN SIGHT「そのとき、どうする?展」、HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE 「FRUITFUL SOCKS」、三菱地所ホーム「KIGOCOCHI」のアートディレクション等。受賞歴にJAGDA新人賞、東京ADC賞、Good design award金賞/BEST100、eddot design award等。 WEB

越前和紙の豊かな表情を感じる3アイテム

  • 今回、どんなプロダクトを作られたか教えてください。

  • 佐々木

    私たちのチームは、
    「PAPER OR」というシリーズで、
    測量野帳、ステッカー、ルームフレグランスの3点を開発しました。

  • 3アイテム作られたんですね。
    「PAPER OR」とはどのようなブランドですか?

  • 佐々木

    「PAPER OR」は、「越前和紙の魅力を紹介する“入り口”
    になるようなプロダクトコレクション」です。
    和紙問屋である山岸和紙店のネットワークを活かした、
    越前和紙の魅力を伝えるアイテムを作りました。

  • 「PAPER OR」はどのような経緯でできたんですか?

  • 佐々木

    まず商品開発するにあたって目指すものを2つ決めました。
    1つ目は、カジュアルな商品であること。
    前回のF-TRADで、
    山岸和紙店は主にBtoB向けの掛け軸を作られたことから、
    今回は幅広い世代の方に使っていただける商品を作りたいと考えました。

    2つ目は、越前和紙ならではの商品であること。
    産地の歴史や立体的な漉きの技術など、
    越前和紙の魅力を伝えられるアイテムを目指しました。

  • 山岸

    そこで決まったコンセプトは、「紙にみえないほどの和紙」です。

  • 「紙にみえないほどの和紙」とは、
    どのような意味ですか?

  • 佐々木

    一般的に、「和紙=白くて和風」というイメージがありますよね。
    山岸さんの案内で産地見学をするなかで、
    川や石のように見える紙に出会い、
    越前和紙のカラフルさや立体感、
    表情の豊かさに驚いたんです。
    そのときの体験を商品に落とし込み、
    「え?これ紙なの?」と驚いてもらえるアイテムを目指しました。

  • 山岸

    第一弾の和紙の試作では、
    「紙に見えない=白くない、別の何かに見える」を軸に、
    2つの製紙所に和紙づくりを依頼しました。
    すると、川の濁流や湖のきらめきを思わせる表情豊かな和紙が生まれました。

THINK OF THINGS の定番アイテム×手漉き和紙のコラボ

  • 測量野帳のこだわりポイントを教えてください。

  • 佐々木

    コクヨが運営するショップ
    「THINK OF THINGS」でも定番商品である
    「測量野帳」の表紙に越前和紙を使った商品です。
    測量の現場で使われてきた、
    丈夫でコンパクトなノートなんですが、
    これまでいろいろな種類が出ていて、
    「ヤチョラー」と呼ばれる愛用者もいらっしゃるほど人気なんですよ。

  • ヤチョラー。
    初めて聞きました。

  • 佐々木

    大量生産品と手漉き和紙を融合しているのもポイントです。
    普段はなかなか手に取る機会のない手漉き和紙を、
    日常の中でカジュアルに使ってもらえる
    きっかけになればと思っています。

  • 山岸

    表紙となる和紙は錆、石、水面などをイメージした全6種類で、
    ひとつひとつが個性豊かな仕上がりとなりました。
    買う時にどれにしようか迷って、
    結局どれもコレクションしたくなる!
    そんな商品になってくれると嬉しいです。

五感で楽しむ和紙のフレグランス

  • ー和紙のフレグランスを作ろうと思ったきっかけを教えてください。

  • 山岸

    和紙には調湿効果があり、
    オイルや香りを含ませる素材としては相性が良いと思うんです。
    F-TRADに参加する以前から、
    香りの製品を作ってみたいと思っていたので、
    このタイミングで念願が叶いました。

  • 佐々木

    フレグランスも、
    越前和紙をカジュアルに使っていただくための重要なアイテムです。
    今回は、越前和紙の起源にまつわる神様である
    川上御前をイメージした香りと、
    和紙の産地に深く関わる大瀧神社をイメージした香りの、
    完全オリジナルのエッセンシャルオイルなんです。

  • 川上御前をイメージした香りとは、どのような香りなのでしょうか?

  • 山岸

    香りのデザインをお願いした方から、
    「和紙の里にまつわる香りを作ってはどうですか?」
    と提案をいただき、そんな表現ができるのかと驚きました。
    川上御前をイメージした香りは、
    冬でも紙を漉く芯のある女性像から着想した、
    凛としつつもリラックスできる香りです。
    大瀧神社は、杉の木に囲まれた境内で、
    思わず深呼吸したくなるような香りを表現しています。

  • 佐々木

    現在は制作途中ですが、完成した香りを早く嗅いでみたいね、
    と話しています。

  • フレグランスオイルの上に乗っている和紙は何ですか?

  • 佐々木

    産地訪問でやなせ和紙さんを訪れた際、
    余った和紙をぎゅっと固めた「わしっころ」
    という商品を見つけました。
    アロマオイルを垂らしてみたところ染み込みがよく、
    香りが紙から広がるイメージにも合うと感じ、
    採用したいと思いました。

  • 山岸

    やなせさんが一つずつ手で握って作っているので、
    形がすべて違います。
    選ぶ時間も楽しんでもらえたらうれしいですね。
    見た目は溶岩のようですが、
    とても軽いというギャップも気に入っています。

  • 佐々木

    今回は黒の一色展開ですが、
    今後は別のカラーも増やしていけたらと考えています。

ありそうでなかった、和紙のステッカー

  • ステッカーを作ろうと思ったきっかけは何ですか。

  • 山岸

    SAVA!STOREのスタッフさんに
    「ステッカーとか作らないんですか?」と
    声をかけてもらったことがきっかけです。
    スマホケースに入れたり、
    パソコンやキャリーケースに貼ったりと、
    身近に使えるアイテムですよね。
    お酒のラベル用などの和紙シールはありますが、
    ステッカーとして展開されているものは、
    意外なことに、
    ほとんどなかったんです。

  • 佐々木

    和紙のステッカーは、
    気軽に手に取ってもらえるアイテムだと思いました。
    測量野帳と同じ和紙を使い、
    表面には印刷加工を施しています。

  • 和紙のステッカーは、たしかにあまり見かけません。
    商品開発は順調ですか?

  • 山岸

    和紙そのものの素材はうまく仕上がっているのですが、
    周囲のラインをシルク印刷にするか、
    箔押しにするかなど、いろいろ試している段階です。
    特にネオンカラーの発色には苦労しています。

  • 佐々木

    白ではなく、凹凸のある和紙なので、
    どうしても発色が難しくて。
    そこは今も調整を重ねています。

  • 商品開発をされてみて、
    いかがでしたか。

  • 佐々木

    普段から紙を使用したデザインをしていますが、
    和紙のデザインは今回が初めてでした。
    越前和紙と出会ったときの驚きや感動、
    工場見学の楽しさを、
    そのまま商品に落とし込めたのではないかと感じています。

  • 山岸

    「紙」と「神」をかけた考え方も、
    今回の裏テーマのひとつです。
    海や石といった自然のイメージが和紙と合うのは、
    紙祖神がいる越前ならではだと思っています。
    越前の歴史と静かにつながっている点も、
    アピールできるポイントですね。
    楽しみながら取り組んでいます。

和紙と越前の魅力をともに伝える

  • お互いの最初の印象は?

  • 山岸

    ペーパーアイテムを多く扱われていて、
    和紙にも興味を持っている方だと聞いていました。
    佐々木さんとは今回が初対面でしたが、
    事前にホームページやSNSを拝見して、
    なんてかわいくてお洒落なデザインをされる方だな
    という印象を持っていました。
    実際に会う前から、
    和紙を使ってどんなものが生まれるんだろうと、
    ワクワクしていましたね。

  • 佐々木

    和紙の問屋さんだと聞いていたので、
    正直、どんな方なんだろうと少し不安がありました。
    固いイメージを持っていたんですが、
    知り合いのデザイナーが作ったTシャツを着ていらして。
    「あ、おしゃれな方だな」
    と思ったのを覚えています。

  • F-TRADがスタートして、
    お互いの印象は変わりましたか?

  • 山岸

    実際にお会いして、
    産地を案内するなかで、
    越前和紙にとても興味を持っていただいているのが伝わってきました。
    フラットな視点で産地を見ていただけたのがよかったですね。
    デザインについては安心しておまかせできたので、
    僕は越前和紙の歴史、原料や製法、活用シーンなどを
    正確に伝えることに集中しました。

  • 佐々木

    山岸さんが越前和紙の歴史をとても大切にされていることが
    伝わってきました。
    歴史をきちんと解釈したうえで、
    新しいものを作ろうとする姿勢が素敵だなと感じて。
    和紙そのものだけでなく、
    「越前をどう伝えていくか」
    が大事なんだと気づかされました。

  • いい関係性ですね。

  • 佐々木

    山岸さんは、どの案に対してもまず
    「いいね」と受け止めてくれて、
    必要な場面ではきちんと意見も言ってくれたので、
    そのバランスがすごくやりやすかったです。
    福井に行くたびに車で送っていただいたりと、
    一緒に過ごして話す時間がしっかりあったので、
    共通の理解や目指す方向性が
    少しずつできていった気がします。

  • 山岸

    佐々木さんは、冷静な印象ですね。
    いつも全身真っ黒な服を着ているのに、
    作品や商品ではとても大胆な色づかいをされる。
    そのギャップが面白いなと思っています。
    無垢を残しつつ、見せ方でしっかりデザインする。
    どれもこれも僕にはない発想で、
    ほんと拓さんには尊敬しかないです。

    あと、トイプードルを飼っていて、
    スマホの待ち受けにされているんです。
    すごくかわいくて。

  • 佐々木

    (スマホの待ち受けを見せる)

  • 一同

    素敵です(笑)

  • 今後の展開についてはどうお考えですか?

  • 佐々木

    まずはセレクトショップを中心に展開していきたいですね。
    あわせて、山岸和紙店のオンラインショップでも販売できたら
    と思っています。

  • 山岸

    展示会への出展なども含めて、
    販路開拓をしっかり頑張っていかないとですね。

  • 佐々木

    「これが紙なの!?」という驚きを、
    いろんな人に体験してもらいたいです。
    問屋である山岸和紙店が和紙の面白さを発信していくことで、
    産地に新しい商品が生まれるきっかけになればと思っています。

  • 山岸

    和紙にあまり馴染みのなかったデザイナーさんにも
    今回のF-TRADがきっかけで越前和紙を知ってもらえる
    機会になるかと思います。
    そうすればまた新たな商品や素材が生まれ、
    越前和紙業界に大きな変化をもたらしてくんじゃないか
    という期待もありますね。

  • 佐々木

    今後もぜひ一緒にアイテムを作っていきたいです。
    アイデア自体はたくさんありましたが、
    まずはこの3アイテムから。
    F-TRADをきっかけに、
    越前和紙の魅力をもっとカジュアルに伝えながら、
    長く続くプロジェクトに育てていけたらと思っています。

  • 山岸

    今後も手漉き和紙に加え機械漉きの和紙を使うなど、
    バリエーションも広げていきたいですね。
    形は変えずに素材を変えながら、
    定番として長く愛される商品を作り続けていきます。
    これからの展開にも、
    ぜひ注目していただけたらうれしいです。

今回開発した商品はこちら